第1回  /  第2回  /  第3回  / 第4回

三五工務店がめざすのは、家づくりの先にある暮らしづくり。
お客様それぞれの理想のライフスタイルを実現する空間をご提供できるよう、
建築業界のみならず、暮らしに関わる多様な業界の方々と語り合い、さまざまな着想を得ています。
その語りの中身をぜひ聞いてみてください。
家づくりやライフスタイルのヒントがきっと見つかるはずです。

最終回となる4回目のゲストは、
札幌で設計事務所「ATELIER O2」を営む大杉崇さん。
北海道という環境と、そこで暮らす人をやさしく結びつける空間を生み出す建築家です。
大杉さんの設計、弊社の施工によるニセコの家でお話を聞きました。

田中
衣食住の各シーンで活躍されている方をお招きして、お仕事に対する考えをうかがってきた対談シリーズ「家語(いえがたり)」も、今回が最終回となります。最後はやはり「住」で締めくくりたく、尊敬する大杉さんにお願いしようと思いました。じつは、1回目にご登場いただいた物林株式会社の阿部省さんが、大杉さんと弊社をつないでくださったんですよね。
大杉
はい、阿部さんはぼくの大学の先輩なんです。最初は阿部さん主催の食事会でお会いしたんですよね。
田中
2015年の秋だったでしょうか。ぼくはもともと大杉さんの建築が大好きだったので、お会いできて本当にうれしかったです。それからすぐに大杉さんから、「ニセコにはどんどん新しい建物ができるけれども、北海道の建築家がかかわっているものが少ないから、北海道らしい家を建てて一石を投じたい。いっしょにやりませんか」というお話をいただいて、「絶対にやりたい!」と(笑)
大杉
それが、いま話しているこの家なんですよね(笑)。クライアントさんとの準備はすでに進んでいて、あとはつくってくれる会社を探すだけという状況でした。初めてタッグを組む相手と、こんなに振り切った建物をごいっしょしていいのだろうかと少し迷いましたが、好奇心旺盛な田中さんなら大丈夫だろうと。つくり手がノッてくれないと、いい建物はできません。そういう人を探していたら、偶然出会うことができたので、これは離さないぞと(笑)
田中
ぼくは現場監督として臨みましたが、仕事が進みはじめて
驚いたのは、ものすごく細部まで図面に反映されている
ことでした。読み込むほどに大杉さんの意図が伝わって
くるような、1本1本の線に意志がある図面でした。
大杉
ぼくがやっている建物は、空気の流れもいっしょにデザインしていくんです。構造の間を空気が通るような設計は、構造の位置をすべて把握していないと難しいので、結果的に細部までしっかり書くことになるんですよね。設計図って手紙だと思っているんです。こちらのメッセージを、いかにつくり手に伝えるか。だからこそ、自分がどういうものをつくりたいのかを、しっかりと図面に書き込む必要があると考えているし、スタッフにもそう伝えています。
田中
設計者が図面に落としていない部分は、こちらで確認しながら進めますが、今回はそういうことがほとんどなかったです。「大杉さん、変態だね」と、大工さんとよく話していました(笑)
大杉
ぼくからすると、田中さんもすごく繊細に仕事を進めてくれた
という印象がありますよ。この建物は構造の部分が支配的で、
田中さんは構造家とのやりとりが大変だったと思います。
何度も確認をする姿を見ながら、施工前の段階でこの人は
大丈夫だという安心感が芽生えていました。
田中
ありがとうございます。それにしても、この構造模型は圧巻ですね(笑)。設計コンセプトを紹介してもらってもいいですか。
大杉
はい。表札に「Le Pont(ル・ポン)」と入っていますが、これはフランス語で「橋」という意味なんです。ニセコは年間2m以上も積もる豪雪地帯で、冬になると建物の1階分がほぼ埋まってしまうんですね。そこで考えたのが、ちょうど窪みのある土地だったので、そこに橋脚のようにコンパクトな1階部分を設け、その上にメインとなる2階部分を橋桁のように架けようという発想です。2階が浮いているようなイメージで、その下に雪が積もったり溶けたり、草花が生い茂ったり枯れていったりと、まるで水辺の満ち潮と引き潮のような変化を年間を通して体感できるデザインとしました。きびしい環境の分、1つ1つの制約をクリアしながらかたちをつくっていくのが、北海道の家づくりの楽しさだと思っています。
田中
それにしても、初めて図面を見たときは相当焦りました(笑)。「本当に木造でできるんですか?」と5回は確認したと思いますが、工務店のプライドとして、絶対にかたちにするぞと。
大杉
屋根の向きを水平方向にわずかに振っているので、梁の角度や高さがすべて微妙に異なっていますしね。一見シンプルなようでいて、つくるのは非常に難易度が高いという(笑)
田中
長いウッドデッキも、手前から奥にかけて奥行きが徐々に広がっていくんですよ。建築に関しては、本当にドSですね(笑)
大杉
よく言われます(笑)
田中
素材感や仕上げのイメージも、新品ピカピカという感じではなく、あえて使い込んだ雰囲気を取り入れていますよね。たとえば外壁については、「どこかに落ちていたようなボロボロの板はないですか」というメールが来たのを覚えています。それで、冒頭に出てきた阿部さんといっしょになって探したんですが、江別の工場で道産のトドマツ材が雨ざらしになっているのを発見してくれて。
大杉
よくぞ見つけてくれたという感じでしたよ。この土地にはいろいろな木が生えているじゃないですか。その木々と馴染む外壁を考えたとき、色も太さもバラバラの板を貼り合わせるのがいいと思ったんです。
田中
貼り終えたときは感動しました。
大杉
ぼくはあの板を探せないし、貼れませんから、そういう意味でも建築というのはやっぱり共同作業なんだなとあらためて感じましたよ。
田中
そして、この家にチャレンジするクライアントさんもすごいですよね。施工期間中の夏に敷地の一角で、クライアントさん、大杉さんのご家族、弊社スタッフでキャンプをしたのもいい思い出です。
大杉
上棟式キャンプ(笑)。あれは楽しかったですね。
田中
クライアントさんのテントで、弊社の棟梁が寝てしまうという珍事もありまして(笑)
大杉
(笑)。でも、そういう距離感がいいですよね。家づくりの理想形のような気がしています。じつはぼくのクライアントは、飲み友だちになった人も多いんですよ。札幌では「中庭会」と銘打って、クライアントの家の庭にみなさんで集まってパーティーをしています。「次はウチでやりますね」みたいな感じで、シーズンごとに転々と(笑)
田中
そういう距離感をつくれるのも大杉さんの魅力なんだと思います。
大杉
夜な夜な飲み友だちを探しているだけなんですけど(笑)。とはいえ、クライアントがいて、つくり手がいて、設計者がいて、この三者がフラットな関係で建物をつくりあげ、その後もずっとおつきあいしていけるのが幸せだなと、ぼくは思いますね。それは、事務所の名前「O2(オオツウ)」でも表現したつもりです。O2とは酸素のことですが、ほかの元素と交わっていろいろな物質になりますよね。クライアントさんや現場の方からいろんなアイディアをいただいて、化学反応を起こしながら新しいものを生み出していきたいという思いを込めているんです。
田中
なるほど。弊社でも、デザインと性能の双方を重視した家づくりに力を入れていますが、そのどちらにも興味・関心のあるお客様とともに、じっくりとお仕事をしていきたいと思っています。それと、道産材の有効活用もテーマに掲げています。
大杉
そうですね。コストのバランスを模索しながら地場のものを使って、地場の人でつくって、地場にお金が落ちるシステムがきちんと整えられれば、それが理想形ですよね。
田中
そのしくみを構築するのが弊社のような工務店の使命だと思っていますので、積極的に取り組んでいるところです。さて、最後にちょっとまとめてもいいでしょうか。この対談にご登場いただいた4名の方は、いずれも違う分野で活躍していますが、北海道や家族を大切にしながら、どうやったら毎日を楽しく、自分らしく生きられるのかを模索しているという点で、すごく共通しているように感じられました。弊社でも、家という空間だけではなく、その先にある衣食住=ライフスタイルの部分でもお客様と価値観を共有しながら、家づくりに励んでいきたいと思います。そして、大杉さんともまたごいっしょできるようにがんばります(笑)
大杉
また特別メニューを用意しますね(笑)
田中
ありがとうございます。でも通常メニューもやりたいです(笑)
大杉 崇(おおすぎ たかし)
ATELIER O2 / アトリエ オオツウ

1972年群馬県生まれ。北海道東海大学卒業後、札幌の設計事務所 画工房に10年間勤務。独立後は、デザインだけでなく温熱環境など機能性を重視した設計で、環境とそこで暮らす人を結びつける住宅を数多く手がけている。

田中 裕基(たなか ひろき)
株式会社三五工務店 取締役副社長
株式会社35design 代表取締役

1982年札幌市生まれ。大学で建築を学ぶも卒業後は飲食業界に飛び込む。コンサルティング会社に4年勤務後、三五工務店に入社。2016年4月、副社長に就任。趣味はブラジリアン柔術やサボテンを育てることなど多方面にわたる。
555
このページの先頭にもどる