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暮らしのレポート

森とつながる24坪の贅沢セカンドライフを見据えた
夫婦二人暮らしの平屋

森とつながる24坪の贅沢セカンドライフを見据えた夫婦二人暮らしの平屋

プランの要は、LDKに森の美しさを切り取る窓の位置。大窓の先に続く森は内部からの視線を伸ばし、体感的な広がりを生み出す。合板現しの天井や無垢床などの自然素材も森と呼応し、森と暮らす醍醐味に満ちた空間。斜面地を生かした設計により、平屋ながらも高台のような眺めを楽しめる


木をはじめとした北海道の素材を使って 北海道の家を建てる。
三五工務店の家が目指すのは 自然に逆らわない、自然な美しさです。
セカンドライフは自然のそばで暮らしたい。
30年近い転勤生活の末、 そう願ったMさんご夫妻が選んだ移住先は 小樽・銭函エリアに位置する山の中腹でした。
小川が流れ、野鳥が飛ぶその場所で 森と向き合う豊かな日々が始まっています。

傾斜の先に森が広がる理想の敷地

30年近く転勤生活を続けてきたMさんご夫妻。
50代も後半に差しかかり、セカンドライフを考えたときに思い描いたのは、「自然を身近に感じる暮らし」でした。
大手ハウスメーカーを中心にモデルハウスをいくつも巡りましたが、デザイン・性能・コストのいずれも理想に叶う出会いはなかったといいます。
そこで地元のビルダーに目を向け、出会ったのが三五工務店でした。
「小樽にある三五工務店が建てたヴィラ『山郷 Villa 香-KAORU-』を見たとき、この空間、この場所で暮らしたいと思ったんです」と奥さん。
同社の設計士・若林 賢さんがご夫妻の思いを受け、理想を叶える土地探しをスタート。
見つけたのは、小樽・銭函エリアの山の中腹にある敷地でした。
この土地は、数軒の住宅が並ぶ一画ながら、東側の急傾斜の先に森が広がり、すぐ下を小川が流れる自然豊かな環境。
若林さんは「崖のような傾斜を含むため、一般的な形の家を建てるには難易度が高く、長く更地のままでした」と話します。
しかし、三五工務店では建築地を取り巻く環境を読み解き、「この環境だからこそ実現できる暮らしがある」という発想で、難条件を長所として引き出せるようプランを計画していきました。

森と住まいをつなぐウッドデッキは、LDKや寝室、書斎の前に設けられている。土間床から直線で続くデッキは、森に向かって大きく張り出し、森との距離をより密接に。象徴的な樹木に照明をともして、夜には森を優しく照らす演出も楽しめる

窓辺に鎮座するのはヨツールの薪ストーブ。冬は雪景色を背景に、ゆらめく炎が楽しめる

コンパクトながら開放感に満ちた空間

Mさんご夫妻は、「歳を重ねても快適に過ごせること」「二人暮らしで持て余さないサイズであること」を理由に平屋を希望しました。
さらに、奥さんが10年以上育て続けている多肉植物のための部屋も欠かせない条件でした。
若林さんが、Mさんご夫妻のライフスタイルと敷地条件を読み解き、導き出したのは、「森に向かって開く横に長い24坪の平屋のプラン」。
周囲の住宅が並ぶ西側の開口を絞り、森のある東側へと向かって開くプランで、LDKや書斎、寝室、浴室など、すべての居場所から森を望むことができます。
リビングの大開口とつながる大きく張り出したウッドデッキは、森との関係をより密接に。
広い玄関土間は南側の一角をガラスで仕切ることで陽当たりのいい植物専用スペースとして機能します。
ウッドデッキに隣接しているので水やりや手入れもスムーズです。
LDKは土間から一段上がり、仕切りのない空間ながらも床の高低差が緩やかにゾーニングを創出。
大開口から森が広がるLDKは、無垢のナラ床や合板現しの天井、内壁の一部に外壁材と同じ道南スギを採用するなど、自然素材が織りなす心地よい空間となりました。

南側に配置することで陽当たりを確保し、土間床なので土汚れなどを気にせず、水やりなどの手入れを行うのに適した環境。ガラス戸なので、LDK側から植物を眺められる。奥さんが所有する多肉植物を載せるトレーに合わせて棚も造作。植物が並ぶこの空間は外観のアクセントにもなっている

一段上がった先に続くLDK。土間との段差は空間のゾーニングのみならず、土ぼこりなどをLDKに持ち込ませない役割も果たしている

キッチンとダイニングは横並びの配置で配膳や片付けをスムーズに。当初は省スペース化を考えて壁付けも検討していたが、森を眺めながら立てるよう、現在の配置に落ち着いた
住まいの最深部に位置する寝室。大きな窓からウッドデッキにも出られる

木漏れ日が大きな窓から射し込む開放感に満ちたリビング。森の木々は、室内からの景観を考えながら間引きを行い整えた

森とともに四季を刻む豊かな暮らし

北側には寝室や水まわりなどを配置。
天井高は2.4mに抑え、南側のLDKを2.6mとすることで、パブリックとプライベートを高さの変化で自然に切り替えています。
キッチンの大容量の背面収納や玄関収納、夫婦の衣類を集約するファミリークローゼットなどの十分な収納や、森へと視線が抜ける窓計画により、面積以上の広がりを体感できる住まいとなりました。
「朝、目覚めるたびに感激します。朝陽が美しく、森を眺める暮らしは想像以上の豊かさでした。
外に照明を設けているので、夜になると森がほのかに照らされて美しいんですよ」とご夫妻。
玄関を開けてすぐに目の前に広がる森の景色は、訪れた友人や親族をも魅了するといいます。
まもなく迎える初めての冬。
「一面の雪景色に変わるのが今から楽しみです。憧れていた薪ストーブもちゃんと使ってみたいと思います」。
森とともに季節を重ねるMさんご夫妻の新たな暮らしは、豊かさと充実さに満ちていました。

張り出したウッドデッキを介して、森の奥へと視線が伸びる広い玄関土間。ひとつながりの空間を土間が緩やかにゾーニングしてくれる
植物専用スペースが映える玄関のある南側。傾斜の先には小川が流れており、将来的にも新たな建物が立つ心配がない。変わらない景観が約束されている

設計士より

森と一体になりながら機能的に暮らせる平屋

Mさんご夫妻よりこれから楽しんでいきたい暮らしのお話をうかがい、急傾斜による視線の高さや森を望む景観の美しさに着目し、この土地を提案しました。お二人は土地が持つポテンシャルをすぐに理解し、共感してくださいました。プランづくりでは、お二人の発想がとても柔軟でセンスがあったので、設計士としても楽しみながら臨めるプロジェクトでした。森は立つ位置や角度によって表情が変わるため、最も心地よい景観が得られる場所にLDKを配置し、東側には大きな開口とウッドデッキを設置。北側のプライベートゾーンはコンパクトゆえに動線が短く機能的で、家事もスムーズです。24坪という限られた面積の中にも、土間空間に“余白”を持たせ、暮らしの変化を受け止める柔軟性を確保。「持て余さないサイズ感」と自然を楽しむ価値観に寄り添い、森とともに豊かに暮らせる住まいを目指しました。

Replan北海道vol.151より