【第5回 築10年】
味わいを深め、家族を包む。 経年変化を楽しむ 10年目の住まい

10年経っても色あせない空間
お気に入りに囲まれたリビングは、大人も子どももくつろぐ住まいの中心。白と木を基調にそれぞれのバランスや色味を緻密にチューニングした空間が、時の美しさをまとっている
時の流れとともに、古くなるのではなく味わいが増す家にしたい。
新築を考えていたSさんが、そんな自身の思いを託したのは三五工務店です。
それから10年。
木はゆっくりと表情を変え、美しく歳を重ねました。
そして3人家族だったSさんご一家は5人家族に。 暮らしの中には、お気に入りの家具や本、レコードも少しずつ増え、 住まいもまた、家族とともにゆっくりと育っています。
歳月を味方につける自然素材の家づくり
札幌市内の閑静な住宅街にたたずむSさん宅。
木製ルーバーに囲まれた玄関ポーチまわりでは、豊かな緑が迎えてくれます。
住宅街にありながらも、窓の先には木々が揺れ、季節の移ろいを身近に感じられる住まいです。
新居が完成したのは2016年。
「洋服や革靴など、使い込むほどに表情を深めるものが好きでした。
家も同じように、時間とともに味わいが増していくものにしたかったんです」とSさん。
自然素材を生かした三五工務店の家づくりは、そんな思いと重なりました。
理想のイメージづくりのために何度も開いたのは、アルヴァ・アアルトの写真集です。
「緑の入り方や白と木のバランス、夜に明かりが漏れる雰囲気までイメージしていました」。
その思いを受け止めた設計士の蝶野さんは、抽象的なイメージをスケッチに描き起こしながら、一つずつ形にしていきました。
1階は、玄関からリビング、ダイニング・キッチン、水まわりへとつながるシンプルな構成。
リビング入り口には吹き抜けの階段ホールを設け、ハイサイドライトから降り注ぐやわらかな光が1階まで届きます。
「Sさん肝入りのリビングのブックシェルフは、荷重を受けるための柱を設けています。
柱で支える構造とすることで、支持材を見せず、すっきりとした見た目を実現しました」と、蝶野さんは話します。
10年という月日の中で少しずつ増えた本やレコード、家族写真。ブックシェルフには、暮らしの積み重ねが映し出されている
光を採り込むシンボリックな2階への階段。ハイサイドライトからやわらかな光が降り注ぐ
家族の暮らし方の変化とともに育っていく住まい
新築当時は3人家族だったSさんご一家も、現在はお子さんが増え5人家族に。
コロナ禍を経て、Sさんはフルリモートワークが中心となり、住まいの使い方も少しずつ変化してきました。
当初はパソコンを置いていたキッチン横のワークスペースが、今は子どもたちの勉強机として活躍。
2階の一室が新たな仕事部屋となり、その時々の暮らしに合わせて空間の役割を変えています。
「家族も増え、仕事も在宅になるなど変化はありましたが、生活動線はもちろん、コンセントの位置まで使い勝手を考えて計画してくれたので、不便だと思ったことやストレスを感じたことはほとんどありません」とSさん。
家族構成やライフスタイルの変化も、おおらかに受け止める懐の深さが、この住まいにはあります。
リビングではソファを手放し、カール・ハンセン&サンのキューバチェアなど軽やかな一人掛けの椅子を点在させました。
広々とした空間で自由に過ごせるだけでなく、その日の気分に合わせて居場所を変えられるのも魅力です。
構造柱を取り込んだブックシェルフには、本やレコード、家族写真が少しずつ増え、月日の積み重ねを感じるSさんのお気に入りの場所になっています。
変わっていく住まいの表情、変わらない暮らしの快適さ
10年という歳月は、木の住まいに穏やかな変化をもたらしました。
道産ナラの無垢床や、合板仕上げの天井、造作のブックシェルフは少しずつ色味を深め、玄関ドアや木製ルーバーは陽射しを受けながら味わいを増しています。
「玄関ドアは一番変化を感じる場所。
年々、好みの色合いになっています」とSさん。
竣工時に植えた庭木は、ほとんど手を加えることなく自然に育ち、住まいに豊かな緑を添えています。
「生活と理想のバランスをすごく意識して計画したのを覚えています。
メンテナンス性とのバランスを考え、木を使う場所とそうでない場所を丁寧に見極めました」。
外壁の木張りを1階部分に抑えるなど、将来を見据えた選択が、10年経った今も快適な暮らしにつながっています。
「大きなトラブルもなく、10年間本当に気持ちよく暮らせています。
蝶野さんとは毎回感謝祭で会えるのを楽しみにしていますし、当時の現場監督さんとはプライベートでの交流もあったりと、良い関係性が続いているのが嬉しいです」と、Sさんご夫妻。
「子どもたちも成長し、家族の形も、仕事部屋の使い方も、少しずつまた変化していくのだろうと思っています。
次の10年は、オーディオやインテリアにもっとこだわりたいですね」と、Sさんは未来を見据えて笑顔です。
家族の暮らしを優しく包み込みながら、この家はこれからもゆっくりと育ち続けていきます。
構造上必要な筋交いも住まいのアクセントに。リビングとひとつながりの空間ながらも、この斜めの筋交いで程よくゾーニングしている
自然と住まいに溶け込む庭
「植物の手入れは得意じゃなくて」と笑うSさんご夫妻。10年間ほとんど手を加えていない庭は、自然の力で育ち、この家らしい風景になった。ルーバーの色や玄関ドアは10年で深みを増した
設計士より
イメージをともにつくり上げていく
Sさんご夫妻は、室内の色味や素材の組み合わせに強いこだわりをお持ちでした。
そのため、室内建具や収納はできる限り造作とし、空間全体の統一感を大切に設計しました。
外部も既製品の物置では雰囲気が損なわれてしまうため、外観と素材をそろえた造作としています。
家づくりでは、アルヴァ・アアルトの写真集を一緒に見ながらイメージを膨らませたことが、とても印象に残っています。
一つひとつ言葉やスケッチで共有しながら、一緒に住まいをつくり上げていく時間は、設計士としても大きなやりがいがありました。
新築から10年経ちますが、お客様感謝祭でお会いできており、暮らしのアップデートの相談で、グループ会社よりカーポートの追加工事もさせてもらいました。
今でも、家族構成やライフスタイルの変化に呼応しながら住まいを大切に育て、充実した毎日を過ごしてくださっていることが伝わり、本当に嬉しく思っています。
Replan北海道vol.154より